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トラウマ
日光東照宮を見終えて、駐車場に向かう道すがら、トイレに行きたくなった。
最寄のトイレに向かって歩いていると、後ろから小学校低学年~幼稚園児くらいの女の子たちが4人ほど、「トイレ、トイレ」と言いながら私を追い抜いて行った。 少し待たねばならんなあ、と思いながらその場所に到着すると、女児の一人が「わたし、洋式じゃないとできない」と言って、和式トイレに入ろうとしない。 今どき珍しいことに、そのトイレは和式4室、洋式1室という組み合わせ。私は、空いている和式に先に入らせてもらった。 さらに珍しいことに、そのトイレにはペーパーが常備されておらず、「お手持ちのティシューをお使いください」との表示があるではないか。私はバッグからポケットティシューを取り出した。 ところが、扉の外が騒がしい。女の子たちが「ここ、紙がない。こっちは?」と各部屋の扉を開け始めた模様。嫌な予感・・・ 数秒後、予感は的中した。 鍵を閉めたはずの私の個室のドアが勢いよく開かれた。 「きゃ~~~っ」 私は叫んだ。女の子はびっくりして扉を閉めたが、勢いあまって弾んだドアが再び開いてしまった。 「ぎゃ~~~っ」 私はもう一度叫んだ。 私が身支度を整えて戸外に出たときには、すでに女の子たちの姿は消えていた。私も恥ずかしさと決まり悪さで、走るようにその場をあとにした。 大人げないと言えば、その通りである。第一、おばさん、鍵をちゃんと閉めたの?と疑われるかもしれない。 きゃ~と叫ぶ、お尻を出したおばさんを見て、少女はどれだけびっくりしたことだろう。 驚きながらも、トイレのドアが閉まっていたら、まずノックするべきと彼女は学んでくれたであろうか。 彼女にとって、観光地のトイレとおばさんのお尻がトラウマにならないことを祈るのみである。 申し訳ございませんが、記事に直接関係のないTB、コメントは削除させていただく場合があります。ご了承ください。 検索
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2016年 11月 05日
![]() 中学生の頃、私の学区近くにも朝鮮学校があった。生徒の姿を目にした覚えはないのだが、「怖い」という噂があって、その印象はそのまま残った。 画面に登場する生徒は女子6人、男子5人。どの子も今どきの高校生のもつ危うさを感じさせない、気持ちのよい若々しさに満ちている。私の持っていた負のイメージなど微塵も感じさせない。 そんな彼らが修学旅行で祖国を訪れる。 到着時の祖国の歓迎ぶりを見ながら、「騙されてはいけない、この国の本当の顔を君たちは知っているのか?」と思った。 また、少し前に「朝鮮学校は高校無償化の対象外とする」というニュースを耳にしたときも、拉致の問題に真摯に向き合おうとしない本国との関係がある限り、それはやむをえないと感じた。 しかし、この作品を見て、自分はいったい何を知っているというのだろう、と考え込んでしまった。この国とその問題点について、私は完全にひとつの側からしか見てこなかったから。 ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ 横田めぐみさんのご家族をはじめ、かけがえのない家族を突然奪われた拉致被害者家族の、数十年にわたる苦しみを思うと、いまだ交渉に応じないかの国の姿勢は決して許せるものではない。この問題を抜きにして、かの国との関係を考えることは、絶対に無理である。 また、度重なる核実験やミサイル発射のニュースには、ただただ怯えるばかり。交渉の余地のない相手を前に、もどかしさは募るばかりである。 でも・・・ 日本で生きている彼らを、ひとつのものさしだけで評価してもいいのだろうか。衒いなく、心から両親への感謝を口にし、未来を信じている卒業生たちの笑顔。その裏には、彼らが背負わされた差別や偏見との、絶え間ない闘いが隠されている。それを、仕方ないことと片付けてよいとは思えない。 彼らには罪はない。そのことは認識するべきだ。 性別の壁、年齢の壁、国籍の壁、貧富の壁 一人として同じ人間はいない。だから人は、「ただ一人の自分」を守るために、自分以外の存在を警戒しなくてはならない。それが昂じて、自分を危うくする存在を疎み、蔑み、排除しようと躍起になる。 自分を脅かす存在に同調はできない。許す必要もない。でも共存する知恵を働かせることは必要なのではないか。 理解や共感、視点を変えて考える必要を心がけてきたつもりだったが、私の周囲には越えられない壁だらけ。ちっとも平らになど考えられていない。 人生半ばを過ぎても、依然未熟である。 『蒼(そらいろ)のシンフォニー』2016年 監督:朴英二 ■
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by hikoso
| 2016-11-05 12:45
| 映画
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2016年 10月 27日
たとえば最上の喜びが私に訪れても
それは私だけの ほんの小さなの喜びで 同じ時間に 病や事故で苦しんでいる人がいることを 忘れてはいけないと思う 生まれてきたことを 手放しで祝ってもらえるしあわせを 君がいつか ちゃんとわかってくれるといいな 誰かと比べるんじゃなく 君自身のラッキーとして しあわせは相対的なものじゃない だから自分の喜びは 高らかに謳うのではなく 深く染み込ませるように 味わえばいい 無垢な瞳もその存在も 慈しんでもらえないまま なくなっていく幼い命のことを 忘れてはいけない 新しい命を抱いてやってきた 君のいとおしさ 哀しみのあふれるこの世で 生きていこうとしている君を できる限りの心で守りたい ■
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by hikoso
| 2016-10-27 00:06
| 日々のくらし
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2016年 10月 25日
TULIPとしてのコンサートツアーは、最後になるかもしれないとの触れ込みで、地元FM局で事前に30分の特番も組まれた今回のライブ。新聞にチラシが入ったりもして、チケットを売りたいんだなという気迫が見えた。
というわけで、中学からの友人と一緒に「TULIP 45th Memorial Tour」に参戦。 会場に向かう人の姿は、同年代の夫婦、あるいは友人同士、あるいは特別な関係??の、白髪混じりだったりする人達。私も同じか・・・自分の年をいやおうなく認めざるを得ないのが不満。自分を客観的に眺めることは、ほんとうに難しいことだ。 思えば、初めてTULIPのライブを見たのは高校生の時。定期テストの直前で、教科書片手に会場に出向いた。あの頃は、1曲目から総立ち、などという無茶はなく、安心して座っていられたのに・・・ ただ、我々がそういう時代の観客だからなのか、年とってずっと立っていることに耐えられないからなのか、どちらなのかはわからないが、アップテンポな曲で立ち上がっても、1,2曲すると座る。そしてまた立つの繰り返し。そんな空気感がおかしくて笑ってしまった。 1曲目は財津さんの高音ボイスに耳を惹かれる「もう笑わなくちゃ」。 スタート直後の音質だけ、ちょっと気になったが、あとは満足のいく内容。というか、ここ数年で聞いたTULIPまたは財津さんのライブの中で、いちばん充実していた。 ステージ向かって右サイド、ベースの宮城君のそばにあった赤いギターを見たとき、パッと安部さんを感じた。 リードギターの安部さんは、2014年、64歳で亡くなった。今回のライブで、財津さんが安部さんのことに触れるのか否かも関心事ではあったが、その前に宮城くんが、何曲かでリードギターパートを演奏していたことに感動。ヘルプのメンバーが2人入っていたが、彼らが影武者のように代役を務めるより、導入でそうした粋な計らいがあったからこそ、とても自然に入っていけた。 また、財津さんが安部さんについて語ったが、それも彼ららしい形だった。安部さんを偲ぶ気持ちをいい感じに抱きながら鑑賞できた。 いま、70年代~80年代に活躍したアーティストが集まって行う、いわゆる「同窓会ライブ」が盛んだが、TULIPのステージはそれとは一線を画した、全盛期と同じ高いプロ意識で演じられていると感じる。 終了後のロビーで、今回は奮発してTシャツとパスケース、そして昔よく聞いたLP、「TAKE OFF」と「日本」のCDを買った。 安部さんが作った曲「木馬」を何回も繰り返し、聞いている。 ![]() ![]() ★第一部 1.もう笑わなくちゃ 2.あいつが去った日 3.ハーモニー 4.あのバスを停めて! 5.夏色のおもいで 6.悲しきレイン・トレイン 7.エジプトの風 8.思い出のフリスビー ★生ギターコーナー 9.恋のドラキュラ 10.箱入り娘 11.田舎へ引っ越そう ★第二部 12.We can fly 13.セプテンバー 14.夏に別れを 15.心の中は白い画用紙 16.ここはどこ? 17.風のメロディ 18.虹とスニーカーの頃 19.ぼくがつくった愛のうた 20.青春の影 21.Shooting Star 22.心の旅 アンコール 23.銀の指環 24.あの娘は魔法使い 25.夢中さ君に アンコール 26.魔法の黄色い靴 ■
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by hikoso
| 2016-10-25 13:48
| 音楽・美術・舞台
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2016年 09月 25日
![]() このアニメ、根強いファンがたくさんいるらしい。 私自身は、主人公がろう者であることと、「聲の形」というタイトル、そしてタイトルロゴの繊細さに惹かれて、ぜひ見たいと思った。 ストーリー:小学校の時転校してきた女の子は耳が聞こえなかった。 最初は彼女の筆談に付き合っていた友達も、少しづつ離れてゆき、将也は彼女に嫌がらせを続ける。 やがて彼女=西宮硝子は転校していった。 数年後― 高校生になった将也は、ある決意を秘め、硝子に会いに行く。彼女の筆談ノートを返し、少し覚えた手話で小学時代の自分を詫びるためだった。 登場人物の心情を丁寧に丁寧に描いている。 人と心を通わせることが難しい時代。 昔が簡単だったとは思わないが、この時代の妙な几帳面さは、人のちょっとした瑕疵を決して許さない。 いじめ問題と障がいのある主人公。重いのはイヤという意見もあるだろう。 私自身、映画もドラマも、わざわざ重い物語を選んで見る必要はないと逃げ腰の昨今だ。 でもこの作品には、テーマの重さを凌ぐ優しい目線と救いがある。 救いとは、いわゆる「昭和」的なもの。将也の母や、硝子の祖母、ちょっとレトロな感じをまとった将也の友人・永束も。 古いからといって粗末にせず、新旧共存すること。大事なのはそこだなと思う。 別に自分に都合よく話を持ってこようとしているわけではない。むしろ・・・ むかつく、うざい、きもい 聞くとゾッとするそんな単語を、しぶしぶ容認している自分がいる。 使ってはいけないと言っても、たぶん効果はないであろう忠告。 時代に迎合して、仕方ないことと諦めているダメな大人だ。 人の心は脆い。 ちょっとしたことですぐに壊れる。 自分で自分を守るためには信念が必要だが、20歳前の若くて柔らかい心に信念はそうそう持てない。 だから大人が守ってやらなくてはいけないのに。大人がきちんと機能していないから、子どもたちは迷い、世の中も未来も危うくなっているのだ。いいかげん、大人が大人らしくならなければ・・・ 『聲の形』2016年日本 原作:大今良時「聲の形」 監督:山田尚子 声の出演:入野自由、早見沙織、悠木碧、小野賢章、松岡茉優 ■
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by hikoso
| 2016-09-25 21:56
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2016年 09月 24日
★暑い、暑いと言いながら、クーラーをつけた日は3日間、扇風機つけたまま寝た夜も3晩。
もともとクーラーは嫌いなのでこんな感じ。暑く感じないのは老化のせいだろうか?? ★珍しく夏の高校野球をテレビで観戦した。 ことしの甲子園大会は、リオ五輪の陰に隠れてしまって、例年に比べ盛り上がりに欠けてたようでもあったが・・・ 優勝した作新学院は懐かしい学校。宇都宮に住んでいた時、作新の小学部に1年だけ在席していたからだ。その時覚えた校歌を聞きたくて、作新の試合はなるべく見ようと思った。 ♪光り満ちたり 涯てしなく 知恵の流れにいそしみて 歌える、歌える! 数十年ぶりに声を出して歌いながら、懐かしさにじーんときた。 ★小学校6年2組のクラス会に出席した。 このクラスは、4年に1度、オリンピックの年にクラス会をやろうと決めている。 毎回、1年1年その年が近づくたび、ダイエットをしなければと思うのだが、結局のところ間に合わずにその日を迎えることになる。 (ダメな私を叱ってください) ことし、担任の先生は80才になられた。次回も一人でも多く集まれますように。 ★久々に『デザインフェスタ』に行った。 いつものデザフェスは春と秋。夏はちょっと規模小さ目な感じだったが、やはりいつも通り、全部見るにはかなり時間がかかった。 娘と入口付近で待ち合わせしたのだが、メールしても連絡なし。そういう時、必ず「何かあったのではなかろうな!?」と不安がよぎる。ついに電話。・・・出た。寝てたんだね、やっぱり。 最近、節約を心掛けているので、ほんとうに気に入ったもの以外買わないことにしようと心に決めていたのだが・・・結構買っちゃったかも。ここでしか買えない物ばかりなので仕方ないか。 これが私のストレス解消なんだわ。 ![]() ★貧乏暇なしである。しかしながら、仕事があるのは幸いである。 しかるべき報酬を得られてこその仕事だとは思う。ただ、やりがいと報酬は必ずしも結びつかないことも。仕方ないか。 ■
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by hikoso
| 2016-09-24 21:30
| 日々のくらし
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2016年 09月 12日
![]() タイトルは、竹内結子演じる主人公の名前。 ストーリー:労働基準監督官として働く段田凛は、わけあって西東京労働基準監督署に異動してくる。 いかなる妥協も許さない彼女の仕事ぶりには、反感を持つ者も。彼女によって倒産に追い込まれた会社もある。しかし彼女の思いは、働く人間のより良い労働環境を作ること、ただそれだけ。そして西東京署のメンバーも彼女に感化され、次第に〝段田化″してゆくのである。 全11話を通して、融通をきかせることの良し悪しについて考え直さざるを得なかった。 私自身は、杓子定規に考えるより、合理的配慮は行いつつ、仕事上可能な融通はきかせようと思ってきたからだ。 でも、さじ加減の違いや温度差が、相手や時・場合によって出てしまう可能性がある。それでは公平性を欠くことになる。本当に公平であるためには、融通などきかせるべきではない。法律やきまりとは、そういうものだ。 だからこそ、法律自体が時代の変化も加味したものでなくては。「前例に従う」などという怠慢を許さず、常々精査することが必要なのだと思う。 「柔軟な対応」といえば聞こえがいいが、融通をきかせることが、必ずしも良いばかりでないのだと心に留めておきたい。 『ダンダリン 労働基準監督署』出演:竹内結子、松坂桃李、北村一輝、トリンドル玲奈、大倉幸二、水橋研二、大島蓉子、佐野史郎、石野真子ほか ■
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by hikoso
| 2016-09-12 02:28
| TV番組・ドラマ・DVD
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2016年 09月 11日
★8月に書き始めたのに、9月も半ばになってしまった・・・
![]() 今回、『秘密 THE TOP SECRET』を見る前にそれをしてしまった。 ・難解だ ・原作を損ねている ・エグい。ホラーなのか ・朝から見るのは辛い ・2回は見たくない などなど、マイナス評価が多くて、いったんは見るのをやめようかとも思ったが、そこは松坂桃李&岡田将生の「ゆとり」コンビが出演しているのだし、見ないわけにはいかない。 作中に登場するMRIスキャナー、死んだ人間の脳をスキャンし、生前の記憶を映像化するという発想には不思議と違和感がなく、すんなり受け入れられた。 でもそれを犯罪捜査につかうのは、遺族の同意やら人権上の問題やら、あれこれ浮上してきて、まず無理だろう。そもそも記憶には防犯カメラのような客観性はないので、証拠能力も怪しいということになりそうだし。 人の心のややこしさに辟易し、面倒くささと暗澹たる思いに、放り出したくなるもののそうもいかず、深いため息をついた矢先、ラストの映像を見て泣いてしまった。 大丈夫、この世にはまだ美しいものが残っている。 『秘密 THE TOP SECRET』2016年日本 監督:大友啓史 原作:清水玲子「秘密 THE TOP SECRET」 出演:生田斗真、岡田将生、松坂桃李、吉川晃司、栗山千明、椎名桔平、大森南朋ほか ![]() シン・ゴジラは、竹野内豊と高良健吾が出るとあって、絶対外せない1本。(やはり、俳優ありき。) 今回のゴジラは形状が変化するのだが、そこも魅力だ。前段階の形が不格好で笑えてしまう。そこから完璧な美しさに変貌する、その意外性がいい。 また、話題にもなっているようだが、ゴジラ出現をめぐっての政府の対応があたふたしていて失笑。 有事の際の心構えも考え直さなければと痛感した。どんな場合でも自分の命は自分の判断で守るしかないのである。 身を守るには知識も必要だ。ぼんやりはしていられない。 危険なものが近づいてきたら、できるだけ遠くに逃げよう。避難するときは、「一時避難」と言われても、大事なものはしっかりと持って逃げなければ。戻れるという確証はないのだから...なんてことをつらつらと考えた。 とにかく、ゴジラの圧倒的な存在感と美しいフォルム、そしてあのテーマ曲の良さを改めて感じた次第である。 『シン・ゴジラ』2016年日本 監督:庵野秀明、樋口真嗣 出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、市川実日子、余貴美子ほか ■
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by hikoso
| 2016-09-11 23:45
| 映画
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2016年 08月 05日
![]() 死刑の是非については、簡単に口にできるものではない。 何の落ち度もないのに、ただ運悪くそこに居合わせただけで、あるいは犯人に狙われて、命を奪われた被害者。その無念を思うと、犯人だけが生きのびていることには大きな矛盾を感じるからだ。 堅実に日々を暮らし、明日の自分を信じて生きていたはずの被害者をなおざりにするわけにはいかない。 しかし、そう思っていながらも、犯人に死刑の判決が出たとき、全く別の感情が生まれることも否定できない。被害者の側に立って物を考えようとしても、犯人の不幸な成育歴につい同情しそうになるし、死刑判決を「喜ぶ」ことは出来そうにない。 本作は、実際にあった無差別殺傷事件を題材にして、犯人の青年とその家族の「今」と「今まで」を織り交ぜながら描いている。 この家族は歪んでいる。確かに歪んではいるが、異常ではない。決して周囲とかけ離れた人たちではない。まずはそのことをしっかり見据えなければならないのだと思う。 小さなズレ、小さな歪みが、経年と共に修復のきかないものになっている。いつの間にか。それが日常生活の怖さなのかもしれない。どこから間違ってしまったのかと振り返っても、あそこからだと指摘などできない。 作中、食事のシーンがいくつも出てくるが、それはコンビニ弁当であり、店屋物であり、レストランである。異様なまでに、作られた家庭料理が登場しない。それでいて、父親が妻に向かい、「飯を作れ」と言ったりする。 そんな、食事の描き方に、監督の意志が感じられる。 私自身、料理がそうそう得意でなく、手抜きすることが多いだけに、今までの家族への食事提供について「申し訳ない」と感じていたりする。その、“痛いところ”を突かれた気がして、一層他人事ではないと思う。 人の感情はそのまま表には出てこない。悲しい人が、始終悲しい顔をしているわけもなく、犯罪者の息子を生み出してしまった家族が、いつも反省しているわけでもない。外側に出てこない人の内面を斟酌する難しさ・・・ 彼らの、表情なく日常を過ごす姿を見た第三者が、「反省のかけらも見えない」などと評することも実はおかしいことなのだ。しかし誰もそこを見ようとしない。邪悪なものを自分の周囲から排除したいと、それだけを願う。表出した一つだけ排除しても、変わりはしないのに。 生きることに何の展望もなく、一発逆転の末、世の中によって殺されたいと考え、殺傷事件を起こした二男・稔― リストラされながら誰にもそれを言えず、追い詰められてゆく長男・保。 死んでしまいたいと常々考えていても、そう簡単に死ぬことはできない。それでいて、生きたいと強く願っていてもそれが叶うわけではない。 神様は気まぐれ、としか言いようがない。 三浦友和、ほんのちょっとだけいい人に見える瞬間があった。新井浩文君、スーツ姿、コート姿がかっこよくて惚れた。 「葛城事件」2016年日本 監督・脚本:赤堀雅秋 出演:三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈ほか ■
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by hikoso
| 2016-08-05 00:13
| 映画
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2016年 08月 01日
![]() 最近、脚本や監督で作品を選ぶのである。何を今さら、ではある。今までは多分に直観+好きな俳優だった。お恥ずかしい。クドカン、遊川和彦好きだな。 そしてこの作品は福田一雄だから見た。 福田一雄といえば「変態仮面」だし、勇者ヨシヒコだし・・・。 蛭子能収のことは元々好きでなかったので、彼主演だから見ようと思ったわけではもちろんない。 凄腕の元やくざという役柄は、あまりに彼に似つかわしくないではないか。ただ、ネットで見た予告編は悪くなかったし見終わってみてまんざらでもなかった。 トリンドル玲奈が思いのほかいい感じで、できるじゃん、この子!と感心。 ![]() NHK朝ドラ「芋こなんきん」以来、藤山直美はいつも気にかかっている存在である。 この作品は、愛する息子を亡くし、家業の漢方薬局をたたんで団地に引っ越してきた初老の夫婦(藤山、岸部一徳)が主人公。 彼女たちを取り巻く人間模様が滑稽でオカシイ。そして予想外の展開にびっくりなのである。 へんてこりんだけれど、ばかげていると一蹴できない何かがある不思議な1本だ。。 ![]() いつも不機嫌な果子(二階堂ふみ)。多感な時期ゆえの、その不機嫌さ加減に郷愁と共感を覚えながら見た。 私にとって、前田司郎といえば、「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」。あの世界観を知っているので、本作の跳び具合にもちっとも驚かない。 果子の小学生のいとこ、カナ役の山田望叶ちゃん、おもしろい役どころをうまく演じた。 ■
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by hikoso
| 2016-08-01 12:09
| 映画
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2016年 06月 12日
先週、家電(いえでん)に2日続けて無言電話があった。
ディスプレイには携帯の番号。 1日目に「もしもし」とでたところ、相手は何も言わないので切った。 2日目、似たような番号だと思ったので、呼び出し音が鳴って受話器は上げたが黙っていたところ、しばらくして相手から切った。 携帯にディスプレイの番号を入れてみたところ、小学校の同級生の携帯だった。数年前からラインでも時々やり取りをする仲なので、「うちのいえでんに連絡くれた?」とラインしてみた。でも何日経っても既読は付かないし、返信もなかった。 考え込んでしまった。 小学6年の時、彼女に意地悪なことを言った記憶がある。自己嫌悪に陥ったので、今でも忘れていない。 その後普通にコンタクトしてきたつもりだったが、彼女にとってそれは忘れられないことだったのかもしれない・・・どうしよう・・・どうしよう 先日見た映画『ヒメアノ~ル』の森田は、高校時代壮絶なイジメを受けた相手に復讐を遂げた。あの時、「過去に他人にしてしまったことは自分についてまわるのだ、復讐もやむなし」と思ったが、それと同じではないか。こちらでは大したことではないと忘れていたことが、相手にとっては決して忘れられない傷になっていたのかもしれない、と。 その後彼女からショートメールが届いて、i phoneの具合が悪く、勝手に電話がかかってしまうとの詫びをもらった。ちょっと安心・・・でもまだドキドキがおさまらない。 ![]() さて。『64』前編・後編を2日かけて見終えた。 前編を見たのは、後編公開前夜の21時45分開始の回― 遅い時間なのに座席が半分以上埋まっていてびっくり。 そして後編は公開日の初回に。 観客層は殆どが40代以上の方々。一人で来ている人もいれば、ご夫婦であろう二人連れも多かった。 地元が舞台になっているだけに、関心が高い。しかもこの時代を現実に経てきた年代層だ。もしかしたら、警察OBの方もかなりいらしたのではないかと思う。 群馬では、いまだ未解決の子供の誘拐事件が2つある。それがまず頭にちらついた。 前編の冒頭、可愛い女の子が手に持っていた、色のついた団子の刺さった枝。セリフでは「めーだま」と聞こえたが、私の知っているそれは「まゆだま」と言われていて、県北に住んでいたころ作ったことがある。 画面には見覚えのある風景も見られ、地元県民が見るとますます気分が高まる。 実は原作を読んでいないので、原作で登場する警察やマスコミの人たちをどのように描いているのか分らないが、映画ではかなり誇張された部分も多いのでは、と感じた。結末も映画オリジナルだとか。 登場する俳優陣が、「ザ・日本映画」という感じで結構気に入った。 佐藤浩市、永瀬正敏がいい。綾野剛もかなりいい役どころ。ベテランの中にチョコっと今どきの人をいれこむ妙が光る。 事件と報道の関係は、常に平らな関係とは言えない。 大きなニュースがあると、その陰に隠れて取り沙汰されないニュースがある。報道の如何にかかわらず、被害者は苦しみを抱え続け、警察は地道に捜査を続ける。 報道の根本姿勢は繰り返し問われなければならないし、「国民の知る権利」や「報道義務」は、当事者の心を置きざりにした状態で叫ばれるべきではない。 今は滅多に見かけなくなった公衆電話ボックスが哀しい・・・ かかってくる無言電話には、もしかしたらいたずら以上の理由があるのかもしれない。 『64 前編・後編』2016年日本 原作:横山秀夫 「64ーロクヨンー」 監督:瀬々敬久 出演:佐藤浩市、永瀬正敏、三浦友和、奥田瑛二、綾野剛、榮倉奈々etc. ■
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by hikoso
| 2016-06-12 14:24
| 映画
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